4月1日になりました。多くの人々のフツーの感覚では「新年度がはじまった」ではないかと思います。もちろんこの日が「エイプリルフール」だということぐらい日本人の誰もが知っていますよね。
ところが、日本ではエイプリルフールだからといって、なにか盛り上がるといったことはあまり感じられません。
せいぜいマスコミが「海外ではこんなに面白いイベントが」「海外ではこんな面白いエイプリルフールならではのニュース」がありましたって、報じるくらいでしょうか。

その報じ方が、暗に「日本人には遊び心がない」とでも言いたいような、マスコミ特有のDisった感じが見え隠れするのは、私がひねくれ者だから?
いや、やはり「年度初め」と「エイプリルフール」は相性が悪いのだと思いますよ。日本人の笑いのセンスの問題ではないと思います。
加えて、学校は春休みですから、学生時代に学校でエイプリルフールにふさわしい笑いを取る、ネタをひねり出すといった訓練を、誰も積んでいませんしね。
とはいえ、年中行事の中でも有名な「エイプリルフール」。深く知ることで、笑いのネタづくりのヒントが浮かぶかもしれません。
エイプリルフールって何?由来と意味

エイプリルフールとは、年に1回だけ、「4月1日だけは嘘をついたり、いたずらをしても許される」という風習のことです。日本語では「四月馬鹿」と訳されることがあります。字面が強烈なので最近は見かけませんね。
ご存知のとおり、エイプリルフールは欧米で生まれた風習です。ただし、英語で「April fool」という場合は、だまされた人のことを意味します。(fool=バカ者)ですからね。エイプリルフールという日を英語で表記すると「April fool’s day」になります。
日本では「嘘をついてもOKな日、許してもらえる日」とよく言われていますが、もともと「嘘」には厳しいキリスト教圏。欧米ではエイプリルフールの「嘘」は、ジョーク(joke=冗談)、トリック(trick=いたずら)、プランク(prank=悪ふざけ)という単語で表されます。
ライ(lie=嘘)という言葉は、ネガティブなイメージが強すぎることから、あまり使われません。
後で笑い飛ばせる程度のウソやジョークで相手を楽しませる日、これがエイプリルフールですね。
すると、どの程度なら笑い飛ばせるのかということになるのですが、これはその国の文化や習慣によってことなります。
欧米では個人だけでなく、テレビや新聞などの大手メディアも公然とフェイクニュースなど出してくるあたりはこの手のジョークに寛容なのでしょう。
エイプリルフールの起源・由来は?
エイプリルフールのはっきりとした起源は分かっていません。複数の説が由来として挙げられています。
最も有力なものは、フランスを起源とする説です。かつてのヨーロッパでは4月1日が新年でしたが、1564年にフランスでは1月1日が新年と改暦が行われました。
これに反対した民衆が、抗議の意味を込めて、旧暦のままの4月1日を「嘘の新年」として祝ったのが始まりという話です。面白おかしなニセの贈り物をしあったのが原型だとか。
3世紀までさかのぼって、当時のインドの春祭りが由来だという説もあります。
この春祭りには、お互いにいたずらをしあう風習があり、それがヨーロッパに伝わったという説です。この古代のインドの春祭りは、現在も行われている、色の付いた水や粉をかけ合う「ホーリー祭」の原型でもあるそうです。
他にも、インドの修行僧が修行から俗世に戻る日であったという説や、キリストの命日である4月1日を忘れないために信者が作ったという説など、いくつかの由来があります。
復活祭も例年このあたり(3月中旬~4月中旬)の日曜日ですから、少し信ぴょう性はあります。
諸説ありますが、海外の民俗学的な分析では、エイプリルフールは春の到来を祝うお祭りのひとつだとみなされているようです。
また、期間限定で既存のルールが取り払われ、ある程度のハメ外しやいたずら、ウソが許されるというのも、世界中でよく見られる風習です。
海外のエイプリルフールはガチ!各国のエイプリルフール事情
イギリス:誰が決めた謎ルール「真剣にウソをつく」「午前中ルール」
イギリスのエイプリルフールでは、「真剣に嘘をつく」というルールがあるそうですよ。
イギリスの新聞社やテレビ局などのメディアが、嘘か本当か分かりにくい情報を真面目に発信することは有名です。「真剣にウソをつく」というルールに忠実なようですね。
これには副作用もあるようで、そのような情報を真に受ける人も多く、問い合わせが殺到することもあるようです。
それでも毎年続いているのは、ユーモアを重んじるイギリスの国民性を象徴するイベントとして、楽しんでいるからなのでしょう。問い合わせをするけど、クレーマーは少ないのでしょうね。

「エイプリルフールに嘘をついていい時間帯は午前中だけ」というルールもイギリスが発祥のようです。
嘘をつくのは正午までと決められていて、気づかずに午後に嘘をついてしまうと、逆に「エイプリルフール!」と愚か者扱いされてしまうようです。
元は、中世の王室で、国王に対する忠誠の証として、その日の午前中だけ「オークアップル(オークの実)」を身に付けるという風習がありそれが、エイプリルフールにも採用されたといわれています。
由来はともかく、エイプリルフールの「ネタ」と「ネタばらし」をその日に完結させれば、笑って一日を終えられますからね。こういった意識が、午前中ルールとして定着していったのでしょう。
フランスでは穏やかなエイプリルフール
フランス語では、エイプリルフールのことを「4月の魚」と表現します。
昔のフランスでは、漁獲期の最終日である4月1日に収穫ゼロで戻って来たか猟師をからかい、他の漁師がニシンを海に投げ込んで釣らせてあげたことが、「4月の魚」の由来だそうです。
これが現代にまで引き継がれ、フランスのエイプリルフールでは、紙に書いた魚の絵をこっそりと他人の、背中に張り付けてからかっているようです。
また、この漁師の話にちなんで、4月1日にはスーパーや菓子店で魚の形をしたお菓子が並ぶことも、フランスのエイプリルフールならではの特徴的な光景です。
日本でのエイプリルフールの歴史
エイプリルフールは西洋から伝わったものですが、それ以前の4月1日はすごくお堅い日だったようです。
江戸時代に存在した「不義理の日」
エイプリルフールが「四月馬鹿」として日本に伝わったのは大正時代のことでした。
その前の江戸時代。4月1日は「不義理の日」という、真逆のコンセプトの日がありました。
中国から伝来した風習ですが、日ごろなかなか会えずに義理を欠いていなと思っている人に手紙を書いて、失礼をわびるという日です。
同じ4月1日に、洋の東西でまったく違う趣旨の風習があったととは、面白いですよね!

大正時代には新聞に「四月馬鹿」の紹介記事が
日本でエイプリルフールの風習が伝わったのは大正時代に入ってからです。直訳されて「四月馬鹿」として、江戸時代から続いていた不義理の日に代わって、全国に広まっていきました。
1932(昭和7)年には、新聞に「四月馬鹿」としてエイプリルフールの紹介記事が載るくらいまでには、広まっていたことが確認できます。
大阪毎日新聞の1932年3月31日付の記事は
「かついでかつがれて、ワハハと笑ふ『四月の馬鹿(エイプリルフール)」が訪れる」
というタイトルでエイプリルフールを紹介しています。記事の内容を要約すると・・・
エイプリルフールの概要、起源について解説し、アメリカ人はジョークが好きで、ジョークをつくることに関しては世界一。お互いに担ぎ合う(お神輿のように「ヨイショ」して=おだてて騙す)ので、騙して楽しい、騙されても楽しい。だからこれで怒るのは野暮なことですね!
人をダマすよりは、ヨイショして驚かせて笑わせよう。ずいぶん楽しそうなエイプリルフールの紹介記事です。この時代の日本人はどんなネタで周りを笑わせていたのでしょうか。
本気出し過ぎ?炎上覚悟?エイプリルフールの「やり過ぎ」エピソード集
エイプリルフールのネタでもっとも筋金入りなのは、今も昔もイギリスでしょう。
1698年には、イギリスの新聞に「ライオンを洗う式典がロンドン塔にて開催される」という嘘の記事が掲載され、大勢の市民がロンドン塔へ足を運んだといった出来事もあったそうです。
そんな過去のエイプリルフールのかなり力の入った嘘エピソードの数々をご紹介します。炎上もしばしば。
モノマネ芸人が元大統領になりすまして大炎上!

1992年のエイプリルフール、アメリカのラジオ番組にリチャード・ニクソン元大統領が出演し、大統領選に再出馬する声明を発表しました。
ご存知のとおり、ニクソン大統領は、ウォーターゲート事件で、議会から弾劾を受けアメリカ史上初めて大統領任期中に辞任した訳アリの人物です。
当然、番組にはリスナーから抗議の電話が殺到しました。
後にこの音声はRich Little氏という芸人さんだと分かりましたが、さすがにネタの筋が悪かった?訳アリ元大統領をネタにしたことで「炎上」させてしまいました。
イギリスの超有名な実業家がUFOを出現させる

1989年のエイプリルフール、ロンドンの郊外に突如巨大なUFOがあらわれて地元住人は大パニックに。警察まで出動する騒ぎとなりました。
実はこのUFO、風船で作られたニセモノでした。仕掛け人は、当時レコードレーベルで大成功していた、ヴァージン・レコードのリチャード・ブランソン氏でした。UFO型巨大バルーン風船を特注で作成したそうです。
彼は冒険家でもあり、何事にも情熱を注ぐ性格。エイプリルフールのネタでもその情熱はいかんなく発揮されたということですね。
エイプリルフールの伝説のウソ、BBCの「スパゲティー畑」

1957年、イギリスの国営放送BBCが「スイスでスパゲティーが豊作です」と放送しました。
ご丁寧に、ゆでられたスパゲティーを木から収穫する映像まで流しました。番組内でネタばらしをしたにも関わらず、スパゲティーの育て方を尋ねる電話が殺到したそうです。
・・・・ネタをネタだと見抜けない人が多いというでしょうか(唖然)
いくら、リアリティのある報道の仕方をしても、撮影のクオリティが高かったとしても、スパゲッティを木から収穫できるとは思えないのですが・・・。
権威がウソをつくと真実になる?

このネタを読んで、STAP細胞の話を思い出してしまいました。専門的な話はそれ以外の人たちにとってはなかなか解りづらく、ついつい信じてしまいがちです。
1976年、イギリスの有名な天文学者パトリック・ムーア氏が、エイプリルフールにBBCラジオ2に出演。
そこで、「本日、冥王星と木星と地球が一直線に並ぶ瞬間があり、その時には地球の重力が軽くなる。その瞬間にジャンプすると、少しだけ宙に浮いていられる」と発表しました。
もちろんウソだったのですが、大勢の人がジャンプして空中浮遊に挑戦。BBCには「宙に浮いた」と報告する電話が100本以上も寄せられました。なかには「一緒にいた友人とともにイスから浮き上がり部屋中を穏やかに浮遊した」などという話も。何かキメているとしか思えないのですが・・・。
先ほど触れた、ウソは午前中ルールの大切さが良く分かります。午後は火消しに走ったのでしょう。
欧米からは、毎年エイプリルフールには気合が入った壮大なウソが届きます。クオリティに妥協せず全力なところがいいですね。それでいて、(たぶん)だれも傷つかない。
今年はどんなニュースが流れるのでしょうか。楽しみです。