英国情勢を受けて大幅安のNY原油 12月21日 

英国で感染力が高い新型コロナウイルスの変異種が拡大しつつあり、ロンドンなどで事実上のロックダウンが再開されてしましました。欧州諸国やカナダなど多くの国で英国との渡航が禁止となったうえ、欧州は貨物輸送も一時停止しました。このような状況を受け経済への不安要素が高まっており、原油の売りが広がっています。

21日の終値は米国時間の原油先物価格は約3%の大幅安となっています。

北海ブレント 50.91 -1.35 (-2.6%) 

WIT     47.74  -1.36   (-2.8%)   バレル/ドル

同日のNYの株式市場は、欧州市場の下落にも関わらず反発して取引を終えているので、経済全般への悲観的な見方は小さいようですが、移動を中心とした原油消費の落ち込みは懸念されているのかもしれません。また、原油相場は先々週まで5週連続してあげていたので、先週から調整局面でもありました。

このような状況の中で、ロシアはOPEC+による減産幅を縮小したいようで、2月は日量50万バレルの増産を求めているとのことです。

OPECプラス、2月の日量50万バレル増産をロシア支持へ-関係者 (ブルームバーグ)

次回の会議は来年1月4日ですが、駆け引きが続きそうです。1月の減産幅縮小もロシアが主導したような形でした。ガスの値段が高止まりして余裕が出てきたのでしょうか。原油のみの輸出に頼るサウジアラビアは頭が痛いところです。なお、OPEC+は12月時点では2018年10月比で日量770万バレル削減していますが、来年の1月から減産幅が日量48万バレル縮小する予定です。

サウジ、長引く油価低迷に備え 21年緊縮予算(日本経済新聞 2020/12/16)

12月15日に発表した2021年予算では歳出を7%削る緊縮策を強いられるうえに、なおも財政赤字が続くという厳しい状況のようです。日米が緊縮策を採らない(採る必要もありませんが)のと比べると、長期的に見た原油輸出からの収入を不安視していることがよくわかります。対応策としてムハンマド皇太子が打ち出した脱石油の改革は誤算続きです。国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)は19年に国内取引所で実現していますが、本当の狙いだった海外上場、つまり海外からの資金調達は目途が立たっていません。脱石油という将来に向けての投資なのですから、ソブリンウエルスファンドを少し取り崩せば良いようなものですが、甘い汁を吸いたい人たちが国内に大勢いると言うことでしょう。

話が横にそれましたが、英国のコロナ感染症拡大は日本経済にもまたひとつ影を落としますが、原油価格の下落は朗報です。私は原油についてはノーポジですから下がってくれた方がありがたいと心の中で少し願っています。