【海外ニュースから】最貧国が気候危機に取り組むのを助けることが、世界の成長を後押しするだろう(IMF専務理事)

コロナ禍の後、いわゆるアフターコロナの最も重要な課題のひとつが、傷ついた経済の回復だということは論を待たないと思いますが、世界の主要国のコンセンサスは、「グリーンリカバリー」という言葉に代表される気候変動対策への投資による経済の回復、活性化となっています。
これを後押しするようなメッセージがIMFのクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事からも発せられ、海外の経済ニュースでも取り上げられています。(ガーディアン・英国より)

ニュースの要旨

コロナ禍の前からの重要課題は気候変動対策


ほとんどの国が急速に温暖化する気候の影響に備えておらず、世界は近い将来に数十億ドルの経済的損害を被るリスクがある。これら気候変動の影響を最も受けやすい脆弱な人々が気候危機に対処するのを助けることが、コロナ以後の世界経済を後押しすることとなり、各国政府は優先すべきことである。

IMFはパリ協定を履行しようとしている国に支援を約束する


気候変動は脆弱な国や脆弱な人々に最も深刻な打撃を与えている。これらは、すでに経済的および社会的問題を経験していることが多い国である。IMFが望んでいるのは、各国がIMFの支援を恐れないことです。その支援とは、非常に脆弱な国のために、これらのショックに対するバッファーを構築することである。

過去のIMFの構造調整プログラムへの批判

ガーディアンのこの記事は過去にIMFが貧しい国々に構造調整と称して、社会的および環境的配慮を無視しつつ、積極的な民営化およびその他の厳格な措置を推進したことへの批判に触れています。

コロナ後のIMFには新しい役割を課されるべき、と専務理事


ゲオルギエバ専務理事は、IMFの使命は変わらないとしながらも、IMFに別の方向性を望んでいることを示唆した。気候変動が成長、雇用、財政の安定にとって重要であることは間違いないとして、マクロ経済の分析、政策提言、財務支援の面から各国が経済を脱炭素化するのを支援する準備ができているとのことである。

この記事から読み取れること


国際的な最後の貸し手でもあるIMFも気候変動対策を無視できない、というより一番のステークホルダーだということを改めて示したということでしょう。
最後の貸し手だけに、IMFの貸出先は気候変動に脆弱な国々であるわけです。したがって、金主である米国をはじめとした先進国が排出削減を怠り気候変動が加速する、もしくは変動の影響を受ける脆弱な国の状況を放置しておくと貸主として非常にまずいことになります。
IMFは先進国の政府部門に対しても国際援助の方向性として、気候変動対策をより重視するよう働きかけていくことになるでしょう。
IMF専務理事の私見をまとめただけの記事ではありますが、世界銀行とともに国際金融体制を支えてきたこのIMFという機関も、機関投資家や海外のファンドと同じく、気候変動対策が最大のビジネステーマであるとして、運営の方向性の舵を切り始めたのだとおもいます。
わが国政府も企業も、この気候変動対策というトレンドが、既に次の世界標準に内定しているものとして、意識を切り替えていく必要があると感じます。

元記事:
Helping poorest tackle climate crisis will boost global growth, says IMF head 
(The Guardian 2021/01/25付)