英語学習の中級者以上にちょうど良い、英語のシャドーイングの方法とその効果


英語のシャドーイング、TOEICや英検対策、リスニング力向上や、英会話上達のトレーニングのひとつとして、英語学習者ならば一度は聞いたことがある勉強法だと思います。

ネットでも参考書でもシャドーイングを推奨する記事は多く見られますが、実際の効果はどの程度でしょう。また具体的な方法はどのようなものでしょうか。なんとなく、続けている方も多いのではないでしょうか。

ここでは、シャドーイングについて、しっかりとした予備知識を知ったうえで効果的に実践するための方法について触れたいと思います。

このシャドーイング、初心者の方には向いていないと思います。英語の速さに追いつけなかったり、舌が回らなくてグダグダになってしまいます。もし試してみて「まだ無理!」と思ったら先に取って置きましょう。

目次

英語のシャドーイングとはどんなトレーニングか

シャドーイングとは、文章を見ることなく流れてくる英語の音声を2、3語遅れてそっくりそのまま影のように復唱していくトレーニングです。

元々は、通訳養成所でのトレーニング方法として使われていたようです。慣れるまでは中々難しいトレーニング法でもあります。

シャドーイングの一番の効果は「リスニング力」の向上。続けることで、確実に効果を実感することができるます。英語学習の初級者の方も「難しい!」と投げ出さず、ぜひ続けてほしいトレーニングです。

また、口を使って発声していますから「スピーキング力(発音力)」の向上も期待できます。

シャドーイングが効果的な理由。~言語学理論から~


リスニングは「音声知覚」「意味理解」の2ステップに分かれます。それぞれのステップで滞りなく処理が行われることで初めて、スムーズに英語を聞き取ることができます。

音声知覚:耳で受け止めた英語の音声を、英語の単語として認識して理解する
意味理解:音声知覚で頭が理解した単語が、文章としてどういう意味なのか理解する。

具体的には

Let it go (放っておけ・何もするな)でせつめいしましょう。「ありのままでは」意訳だと思っていますが、聞き馴染んでいるので「ありのままで」に訳しましょうか。


  1. 耳に入った「レリゴー」が何なのか、脳のなかの記憶データベースに照会をかける
  2. 「レリゴー」が「let it go」であるという音データを、記憶データベースから引っ張ってくる。これで音声知覚が完了しました。
  3. 音声知覚した「let it go」の音がどういう意味を持つのか、再度脳の記憶データベースに照会する。
  4. 記憶の中から「ありのままで」が引っ張られてきます。
  5. 「let it go」が「ありのままで」であると理解する。これで意味理解が完了しました。

リスニングができない理由は人によって様々だと思いますが、多くの方は音声知覚でつまずいています。この音声知覚を鍛えるための効果的なトレーニングがシャドーイングです。

シャドーイングのための題材選び

シャドーイングの効果について理解していただけたら、実践に向けて題材を選びましょう。

シャドーイングに取り組むための基礎トレーニングは済んでいますか?

初心者から中級者ぐらいの方で、まだシャドーイングに本格的に取り組んでない方、いきなりシャドーイングに移るのではなく、リスニングや発音がしっかり出来ているか確認しましょう。

1.その英文を書き出すというリスニング勉強法「ディクテーション」がだいたい出来ている。→聴き取れているということですからシャドーイングにチャレンジしてみましょう。

2.音読を録音してみて、それなりに教材に似せることが出来ている。→独学ですと、自己評価になってしまいますが、あなた自身が出来ている、イケると思ったらシャドーイングにチャレンジしてみましょう。

レベルや興味にあわせたシャドーウイングの題材選び

シャドーイング練習には音声付きのテキストが必要不可欠です。映画や海外ドラマなどを利用する場合は字幕付きのものが必須です。

NHKラジオ英会話(英語講座)を使ったシャドーイング

すでにNHKラジオ英会話で英語の学習を続けられてきた方は、これをシャドーイングの教材として使うのが最適でしょう。テキストブックがあるのでそれを片手に実践できます。また、インターネットでの音声再生も使いやすいですし、アプリなら更に効率的。(もちろんCDでもかまいません)

TOIEC受験の関連教材、公式問題集を使ったシャドーイング

TOEICテストの受験を控えている、またはTOEICテストで高得点を狙っている方は、関連教材や公式問題集を使ったシャドーイングがベストです。

シャドーイングの効果は、TOEICにも必要なリスニング力の向上がメインですが、TOEICでよく使われる単語や英文法の記憶の定着にも貢献しますから、毎日TOIECの練習問題に触れるトレーニングをすると言う点でメリットが大きいです。

無料動画や洋画・海外ドラマを使ったシャドーイング

Youtubeや無料動画サイトなどで、好きな映画や海外ドラマを教材としてつかうのもいいでしょう。先に二つのシャドーイングの題材として英語学習教材を選びました。これらは、会話のシーンでも、しっかりとした録音用の発音になりがちで、やはりリアルの会話とは異なります。そこで、ここでは日常会話が多い海外ドラマはいかがでしょう。NETFLIX、アマゾンなど有料ストリーミング配信で探すことができます。

最も重要なことは、必ず英語の字幕付きの作品を選ぶこと。

フレンズ(Friends)、フルハウス(Full House)、Sex and the city あたりがシャドーイングの題材としてよく使われています。


正しい英語のシャドーイング「かんたん」実践法

さて、シャドーイングのネタも見つけましたし、実践に移りましょう。
基本的なやり方は、「聞こえた英文の後ろを影(shadow/シャドー)のように、発音しながら付いていく」ことです。流れてくる英語の0.5~1秒遅れぐらいで発音していくような感覚です。

英語のシャドーイングの効果は上述のとおり「音声知覚」を鍛えてリスニング力を高めることです。この効果を引き出すための効果的なやり方を追求していきましょう。

ステップ1:テキストを見ながら発音する(音読する)

まずは、音声を流さずにテキストを見て自分のペース、速度で音読しましょう。特に、シャドーイング初心者は必ず音読をして、その文章について頭も口も慣らしておいてください。慣れてきたらこの音読のステップはスキップしても結構です。

ステップ2:テキストを見ながらシャドーイングをする

ここからが、実際に音声を流してシャドーイングになりますがが、まずはテキストを見ながら行います。

ここでシッカリと発音を確認しましょう。また文章を目で見ているので単語や意味も分かりやすいかと思います。このトレーニングに時間を十分にかけて、流れてくる音声に十分フォローできていると自身が着いたら大丈夫。次に移りましょう。

かなりシャドーイングに慣れている方はこのステップも飛ばして大丈夫です。

ステップ3:音声のみのシャドーイングに挑戦

ここが、本来のシャドーイングのやり方です。

テキストも見ずに、ネイティブのスピードに合わせて発音しながら、しかも理解するという最終ステップです。初心者から一部の中級者の方がシャドーイングに挫折するのは、いきなりこの段階から入ってしまうのが大きな原因だと見ています。

ステップ1、2を経てきた方は、最初は大変かと思いますが、徐々に慣れていきます。全然歯が立たない場合もステップ2に戻って頭と口を慣らして再チャレンジ!

アレンジ1:音声を聞きながら無言で書き出すシャドーイング

音声を聞きながら発音せずに書き出す、というシャドーイングもありますが、これは超難しいです。だいぶ慣れた方が、ゆっくり目のスピードの題材を使って行うと、頭をフル回転できて効果的です。というのは、シャドーイング、慣れてくると頭を使わずに流してしまうことが多々あるからです。

万人向けではありませんが、こういう訓練法もあるのだと知っておいて損は無いでしょう。


シャドーイングの効果を最大限に高めたい!そのための工夫やコツ

せっかく、シャドーイングのトレーニングをするのですから、効果がしっかり出てほしいものです。効果を高めるためのいくつかの工夫やコツがありますので、試してみてください。

工夫その1 イヤホンやヘッドホンを使う

始めのうちは自分の発する音に邪魔されて、題材の音声の聴き取りが上手くできません。その場合は、イヤホン(ヘッドホン)を使うことで、題材の英語の音のみに集中することができます。この場合は自分の発音は確認できませんので、ほどほどに。

工夫その2 標準再生のシャドーイングにこだわる

題材によって話す速度の速い遅いはあります。速度による難易度の調整はそちらで行いましょう。

最近は機器が発達して、0.5倍速や倍速など、同じ動画や音声データを自然な感じを損なうことなく様々な速度で再生できます。これはシャドーイングには必要ありません。

英語はイントネーションやリズムが大切で、またシャドーイングはそれらの訓練を兼ねています。したがって、そのリズムなどを損なう異様にゆっくりとしたスピードや倍速などでのシャドーイングは効果が期待できません。あくまで、標準再生、ナチュラルスピードの英語音声でシャドーイングをしてください。

工夫その3 発音のみにこだわり、他のこと(単語のスペリングや文法など)は気にしない。

シャドーイングする時に、単語のスペリング(綴り)を気にしたり、その文章の文法を気にしたりし始めると、意識がそちらに行ってしまい、スピードに追い付けなくなりがちです。

まずは、発音のみにこだわりましょう。それも慣れない間は、だいたい合っているぐらいの発音で、音声についていく感覚、ついていけるかが重要です。

一通り、シャドーイングが終わったら、気になった箇所を復習したり調べたりしましょう。

工夫その4 ついていけなくなったらその文章はパス。次の文章に備える

長い文章だと徐々についていけなくなることは良くあります。そうなったらその文章はパス。次の文章に備えるため一旦口を動かすのを止め、頭を待機モードにしましょう。自分自身で何を言っているのか分からないままシャドーイングを無理やりしても効果は期待できません。

シャドーイングの時間は短めに、繰り返し行う

シャドーイングは学習というより、英語の音のスピードに慣れるための「訓練」の性質を強く持っています。このため長時間続けると疲労がたまりますし、頭に入ることも、身体(特に口)が身に付けることも少なくなってきます。

特に最初のうちは、短い時間に区切って、同じ個所を何回か繰り返してシャドーイングすることで、いわゆる「英語口」も作られ、リスニング速度にも慣れていきます。

【重要】自分のシャドーイングを録音する

最初は恥ずかしいと思います。録音すると考えただけで恥ずかしい。しかし、ネイティブとあなたの発音のどこが違うのか、今回のシャドーイングのうち、どの箇所がついて行けていなのか、など課題を確認するのに録音は最適です。

とりあえず、録音はしたというか方。そのままにしていませんか。ミュージシャンやアナウンサーでもない限り自分の声は聞きたくないでしょうが、勇気を出して再生ボタンを押しましょう。

英語の訛りがあることを理解したうえで行う

英語教材の場合は意識する必要はありません。Youtube動画やNetflixなどでお気に入りの映画や海外ドラマを使ったシャドーイングですと、当然訛りがあります。一番大きな区分けはアメリカ英語かイギリス英語かの違い。

あなたがイギリス英語の発音やリスニングを強化したいのか、またはアメリカ英語なのかで教材として使う音声や動画が異なってきます。このため目的に応じて統一した方がいいでしょう。TOIEC、英検などをふまえても、多くの方にはアメリカ英語が無難です。

ただ、TOIECでもリスニング問題で様々な訛りの発音が登場します。訛りに対応するという点で様々な題材に触れておくのは良いことです。

あとがき

シャドーイングは素晴らしいトレーニングです。一度挫折した方はこの記事でどこに問題点があったのかを見つけ出し、それをふまえて再開してもらえればうれしいですし、これからチャレンジしてみようという方には、ここでお伝えした方法や工夫をぜひ採り入れてみてください。

シャドーイングで「音声知覚」を身に付け、リスニング力を向上させましょう。口を動かしているうちに、いわゆる「英語口」ができて英語を発生することに慣れてきたら、発話もだいぶ身に着いています。会話まではあと一歩!

再三になりますが、シャドーイングを継続するためには、難しすぎる題材は避けることと、自分に合った内容・題材であること。無理のない範囲で繰り返してくことが重要です。